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色管理

卵を染めることから パッケージデザインについて学べること

私たちが知る必要のあるものはすべて幼稚園で学ぶと言われていますが、このフレーズは印刷担当者やパッケージ・デザイナーにとっても当てはまるでしょうか?
 
イースターは終わってしまいましたが、春に初心に立ち返り、卵を染めるという簡単な子供のアクティビティを通して、パッケージ・デザイナーと印刷会社が直面している最も複雑な色の問題を解決してみましょう。
 
 
複雑な色の問題
 
ここに、パッケージのカラーマネジメントにおける3つのレッスンがあります。
 

1.カラー印刷で黒が必要なのはなぜ?

 
シアン(青)、マゼンタ(赤)、イエローを混ぜれば、黒を含んだどんな色だって作ることができます。では、なぜプリンタにはCMYKというシアン(青)、マゼンタ(赤)、イエローに加えて、ブラックインク(黒)が必要なのでしょうか?
 
実験:
 
イエローのインクに同量のシアン、マゼンタのインクを加え、黒色のインクを作成します。
 
 
黒色のインク
 
そこに白い卵を入れ、20分間置きます。 卵は黒くなるでしょうか?
 
 
卵は黒くなるでしょうか?
 
結果:
 
 
減法混色の原色
 
赤、緑、青の加法原色を異なる組み合わせで混合すると、全ての色のスペクトルが作成されます。 2つの純粋な加法原色を組み合わせると、減法混色の原色が得られます。シアン、マゼンタ、イエローの減法混色の原色は、赤、緑、青の反対色です。
 
私たちが卵を染めたのと同様に、多くのプリンタでは、色の範囲を広げるためにシアン、マゼンタ、イエローを使用しています。白色の基材(紙など)に印刷すると、それぞれが白色光からのその反対色を完全に吸収または減法します。(Additive vs. Subtractive Color Modelsの記事で詳しく知ることができます)。
 
 
では、本当に卵を黒く染めたいなら、何をする必要があるのでしょう?
 
シアン、マゼンタ、イエローの染料をもっと多く使うこともできますし、4色目の色として黒を加えることもできます。減色印刷方法では、黒(または鍵=Keyを表すK)がCMYに追加され、4色印刷のCMYKが作成されます。黒は、それほど高価ではないうえに、画像やグラフィックスを中和するのに役立ち、陰影に濃度を加える重要な役割です。
 

2.基材(印刷の対象物)には色があります

 
あなたが完璧にデザインを指示したのに、印刷会社からプルーフを入手すると、色が正しくありません。何が起こったのでしょう?
 
実験:
 
色が豊富な美しい卵を、地元の農場で見つけました。
 
 
色が豊富な美しい卵
 
同じ色のインクで異なる色がどのように反応するかを見るため、純粋な赤いインクにそれぞれをちょうど4分間ずつ漬けてみます。
 
 
同じ色のインクで異なる色がどのように反応するか
 
全て同じ赤の色合いになったでしょうか?
 
 
オレンジ色または茶色の色調
 
結果:
 
背景の色は、染色された卵の最終的な色を決定する上で非常に重要な役割を果たします。赤色ではなく、それぞれがオレンジ色または茶色の色調になっています。
 
これはデザイナーとプリンタをいたるところで悩ませている、よく見落とされる問題です。 色を明示してインクを混色するときは、基材の色を考慮する必要があります。赤い染料、赤い印刷用のインクは、純粋な白い背景においてのみ赤く見えるのです。
 
私たちの実験から明らかに分かるように、同じインクの色を使用しても、基材の色がわずかに違うだけで、最終結果に大きく影響します。 特に、同じデザインを複数の基材に印刷する場合は、常にこれを考慮することが重要です。
 

3.カラーコミュニケーションは主観的なものです。

 
あなたがこれらの卵を染色して、「春の色」を表現したいとします。どのようにインクの色を設定すれば、あなたの「春の色」が再現できるでしょうか?
 
実験:
 
CAPSUREハンドヘルドカラーマッチングツールを使用して、明るい春の花/植物のカラー測定をし、それぞれに最も近いPantone Colorマッチを見つけます。
 
 
ハンドヘルドカラーマッチングツール
 
次に、そのカラーデータを使用して、黄色、オレンジ色、赤色を混ぜてインクを作り、卵を染めます。
 
 
明確なカラーのターゲットを設ける
 
出来ました。
 
ここから学べること:
 
デザイナーは、周囲の色からインスピレーションを受けて、印刷担当者が理解できないような主観的な言葉でプリンタに説明してしまいがちです。 「晴れやかな」、「桃色の」、「新鮮な」、「春っぽい」…などという色は、インク缶で見つかる色ではありません。明確なカラーのターゲットを設けないと、あなたの印刷担当者が作成する「春の色」は、あなたが思い描いた「春の色」ではなく、やり直し作業が必要になる可能性があります。
 
印刷担当者はターゲットを正しく理解していますか?分光濃度計光学濃度計色測定 価格Pantoneカラーブックマンセル表色系など、色を明確に特定する方法はたくさんあります。
 
もちろん、私たちは幼稚園で学ぶような方法よりも、正確な色を指定し、伝達し、印刷する色の管理の方法がはるかに多くあることを知っています。 しかし、時に基本に立ち返ることは、私たちがまだまだ多くのことを知る必要があることを理解するのに役立つのではないでしょうか。
 
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13_色彩値 等色関数:人の目をものさしに

今回は残りの2つの要素である②「色としての物体」と③「受光器としての目」をとりあげます。
 
②色としての物体
 
照明からの白色光はそのタイプによって分光分布に違いはあるものの、通常全ての可視域の光が十分な量含まれています。
物体はこれらの照明光に作用し波長選択的な吸収や散乱の後、反射もしくは透過による光として観測者に向けて光を再放出します。
たとえば, 図-26のように照射された照明光の波長は選択的に吸収・散乱され、その波長構成を変化させて反射もしくは透過することで着色することになります。
 
 
反射による影響
図-26 反射による影響
 
たとえば、赤いボールに照明が当たった場合、短波長側の照明成分はその多くが吸収によって熱に変化します。
一方、長波長成分は多くがそのまま反射され、結果として反射される波長構成が人に赤として知覚されることになります。
図-27では照明された光の各波長でのエネルギー量を100%とした場合、反射される光量が各波長で何%になるかを表しています。
 
 
物体による照明光のスペクトルの変化
図-27 物体による照明光のスペクトルの変化
 
このような物体が持つ反射の特性を分光反射率(透過物体の場合は分光透過率)と呼びます。
この分光反射率の特性こそが、その物体が持つ色の性質ということになります。
この性質は色の指紋のような意味を持ちます。(だからこそ、これの特性を測定するわけですが...)
残念ながら私たちの視覚はこの物質の色の特性の全てを捕えることができません。
私たちの目は、この特質が私たちの目に落とすを知覚しているにすぎないのです。
 
今日の分光測色計はこの色の指紋である分光反射率(正確には「分光反射率係数」←いつか説明します)をサンプリングによって測定します。
そして色彩値計算としてその特質が目に落とす影を計算して 色彩値として提示しているのです。
 
③受光器としての目
 
目による波長応答の特性もCIEによって標準化されています。
つまり、平均的な人の視覚の可視光に対する波長応答特性が数値として定義されています。
色彩値は個々の人間がどのように知覚しているかを云々しているのではありません。
色のコミュニケーションにとって個々の人の色の知覚量は意味がありません。
標準的な観測者がどのように知覚するかが重要になります。
幸運なことに、視覚という官能器官は正常な色覚を持つ人間では概ね同じような波長応答特性を持っていたようです。
このような幸運が色に関する視覚の標準化がうまく機能することになった要因だと言われています。
 
ではどのようにしてこの応答特性はモデル化されたのでしょうか?
もちろん生きた人間の目に電極のような端子を突き刺して実験することもできないわけです。
その代わりとしておこなわれた実験が等色実験と呼ばれるものです。
 
等色実験では図-26のように上下に並んだ2分視野によるマッチング実験として実施されました。
覆い用のスクリーンに開けた穴を通して上側と下側に提示した色をマッチングさせるという実験です。
 
 
物体による照明光のスペクトルの変化
図-28 等色実験
 
2分視野の片方にそれぞれの錐体を刺激するための原刺激の[R][G][B]*を用意します。
もう片方(図-28では下側)に目標の色光となる単色光(スペクトル光)を照射します。
この上下の色がマッチするよう[R][G][B]に用意されているボリュームでその光量を調節するという実験がおこなわれました。
各原刺激のボリュームは、それぞれ錐体内の3つの受光器に対する刺激量になっています。
人に知覚される全ての色は、単色光(スペクトル光)の加法混色で再現できるため各スペクトルと3つの受光器の刺激量の関係が判明すれば、この方法で全ての色に対する錐体の 応答特性が計算できるわけです。
 
この実験の際、目標色として使用された500nm付近の単色光(スペクトル光)はあまりにも鮮やか過ぎて、これら3つの原刺激の混色では等色することができませんでした。
そこで、原刺激の[R]を目標色(単色光)側に移動させ、単色光の鮮やかさを低下させることで等色を実現しました。
 
* 用いられた原刺激は[R][G][B]それぞれ700.0nm、546.1nm、435.8nmの単色光が用いられました。
 
 
鮮やかすぎる単色光への対応:等色実験
図-29 鮮やかすぎる単色光への対応:等色実験
 
このような実験を複数の被験者で実施した結果が図-30のようなCIERGB表色系の等色関数です。
 
 
RGB表色系の等色関数
図-30 RGB表色系の等色関数
 
もちろん、この応答特性は生理錐体の応答特性そのものではありません。
しかし、生理応答特性から線形変換で得られる応答特性だということができます。
 
つまり...少し長くなりますが...生理錐体の波長応答特性が仮にS、M、L(図-31参照)だとしましょう。(当時は分かっていませんでした。)
ある目標色が生理錐体のS,M,Lをそれぞれs、m、lだけ刺激していたとします。
さまざまな目標色に対して、このs、m、lが知りたいのです。
 
この目標色の刺激に等色するために[B]、[G]、[R]の原刺激をb、g、r使用したとします。
ここで使用した原刺激[B]はSの生理錐体だけでなく、MやLの生理錐体も刺激します。
しかし、原刺激[B]の波長は固定されているので、各S、M、Lを刺激する比率は常にS_b:m_b:l_bに固定されているはずです
同様に、原刺激[G]はS_g:m_g:l_gの比率で、原刺激[R]はS_r:m_r:l_rの比率で刺激します。
 
ということで、[S]を刺激する全ての量を合計するとs=[S_b×b]+[S_g×g]+〖[S〗_r×r]ということになります。
[M]では、m=[m_b×b]+[m_g×g]+〖[m〗_r×r] [L]では,l=[l_b×b]+[l_g×g]+〖[l〗_r×r] となり、結局、目標色のs、m、lは等色に使用した[B]、[G]、[R]の原刺激のb、g、rをそれぞれの比率による3x3の行列で変換することで線形的のに求めることができます。
 
つまりb、g、rで求めた応答特性b ̅(λ),g ̅(λ),r ̅(λ)は生理錐体[S]、[M]、[L]の応答特性s ̅(λ),m ̅(λ),l ̅(λ)にリニアな関係の応答特性になっているということです。
そして、いつでも3x3行列でs ̅(λ),m ̅(λ),l ̅(λ)に変換可能な応答特性だということができます。
ただ、この3x3の行列は当時は不明であったということです。
 
 
 
生理錐体の応答特性:smlとリニアな関係のgbr
図-31 生理錐体の応答特性:smlとリニアな関係のgbr
 
ということで、無事、標準的な人の錐体(に線形な)の応答特性CIERGB表色系の等色関数が求められたわけです。
 
話がだんだんややこしくなってきたので「受光器としての目」の残りの部分は次回に回します。
 
 

12_色彩値に影響する3つの要素

色彩値のL*a*b*は数値で指定できる色空間を構成すると申し上げましたが、今回から、それらの数値がどのように求められているかを説明していきたいと思います。
物体の色を知覚するには光が照明されていなければなりません。真っ暗な部屋では何も見えませんから、これは当然のことかと思います。物体はこの照明光を反射もしくは透過する際に照明光の一部の成分を選択的に吸収したり散乱したりします。
私たちはこの効果を目で捕えて色として知覚します。
 
ということで、色を数値化するにあたって色そのものだけでなく図-22のように照明と受光器としての目(そして脳での知覚処理も一部)を考慮に入れて数値化されています。
 
 
色彩値の決定に寄与する3つの要素
図-22色彩値の決定に寄与する3つの要素
 
これら3つの要素①照明、②色としての物体、③受光器としての目を繰り込んで色彩値を決定します。
ただし、色彩値としては物体の色を評価したいわけなので、①照明と③受光器としての目に関しては標準的なモデルを使用します。
つまり、色の色彩値をコミュニケーションする上で、ある特殊な状況の照明や特定の観察者の知覚における色を数値化してもあまり利用価値が無いためです。①照明と③受光器としての目の標準的なモデルはCIE(国際照明委員会)によって定義されています。 一方、②の色としての物体は測色計で測定することで求められます。
 
色彩値は最終的には3つの数値に集約されます。なぜなら人の目の受光器(錐体)が3つのタイプしかないためです。
 
私たちは光=可視光域の連続する電磁波=連続する波長(スペクトル)から構成されものを 3つのタイプの錐体で集約した結果を色として知覚します。
このシステムをモデル化するには、連続する可視光の波長域を3つの値に集約するモデルを構築する必要があります。
 
そこで、①照明、②色としての物体、③受光器としての目の波長に関する特性を1つずつ概観していくことにします。
 
①照明 CIEで定義されている標準的な照明のタイプがいくつか用意されています。
標準イルミナントとしてはD65とAの2つが定義されています。
定義というのは各波長における光の相対エネルギー分布が数値化されているということで、D65では図-23、Aでは図―24のような分光分布として数値として定義されています。
 
D65は6504Kの相対色温度を持つデイライト(昼光)の代表的なモデルとして、Aは2856Kの色温度を持つタングステン光の代表的なモデルとして定義されています。
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-23イルミナントD65の分光分布
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-24イルミナントAの分光分布
 
このほかにもD50、D65、D75やF1~F12がこれを補う照明タイプとして分光分布が数値として定義されています。
DXXXは昼光をFXXは蛍光灯の照明をモデル化したものを意味します。
蛍光灯にさまざまなタイプがあるためタイプに応じてさまざまなモデルを用意しています。
図-25にF1~F12 のタイプを示します。
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-25 イルミナントFのタイプ
 
このようにモデル化され、波長における相対エネルギー分布が数値定義されたものを「イルミナント」と呼びます。
数値化された「標準の光」という意味ですが、可視光よりも広い波長域を定義しているため狭義の光には当たらないとして「イルミナント」と呼ばれています。
 
イルミナントはモデル化された光なので現実には存在しない場合もあります。
たとえば、昼光をあらわすDXXXというイルミナントは世界中のいくつかのポイントで測定された昼光の平均値を使用して定義されており、これを実現する現実の照明は存在しません。
ですから、良くイルミナントD50の標準光源xというような表現をしますが、正確にはイルミナントD50のデイライトシミュレーター(常用光源) ということでキッチリD50を実現した光というのはありません。
 
現在、多くの生活環境の中でLEDによる光が利用され、エネルギー効率の面からも主な照明光として急速に普及しつつあります。
しかしながら、このLEDによるイルミナントは2017年3月の現時点では未だCIEで定義されていません。
標準的なLEDの分光分布というものが確定しにくい現実があるのかもしれませんが、市場からは早急な対応が望まれています。
おそらく、もうそろそろ規格化されるのではないでしょうか...
色彩値の数値を決定する際には①照明の要素として、このイルミナントの中から1つを選んでその分光分布を色彩値の数値計算に使用することになります。
 
次回に残りの2つの要素を解説したいと思います。
 
 

色を管理することで市場における偽物の横行に対処する方法

「にせ」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?偽札などでしょうか?実は、「にせ」はもうちょっと、深いところまで表す言葉です。言うなれば、世界中のあらゆる業界全てに影響を及ぼすのが偽なのです。
製品の高潔さに大きな影響を与え、経済的な損失を引き起こす原因となります。実際、世界の取引において、2~2.5%が偽物であり、その総額は6千億ドルを超えるとも言われています。
 
偽物はブランドイメージを著しく傷つけます。
アパレル、医薬品、電子機器、化粧品、タバコ、スポーツ業界の全てが過去数年間にわたって偽造品に悩まされてきました。偽造の割合は年々伸び続けているだけでなく、その被害にあう製品の種類も多様化の一途を辿ります。
 
偽物は、消費者の健康被害にも直結することがあります。調理用油、オリーブ、幼児用食品、ワイン、スピリット、ヘルスケア、パーソナルケア製品、医薬品、飛行機、自動車の部品(自動車 塗料)、電子機器といったあらゆる製品の安全性が脅かされます。
中には、毒物や有害物質を含んだ偽物が発見されたケースすらあります。
なんと、偽物の錠剤には、対象製品の色に似せるために道路用の塗料が使われていたのです。
 
 
偽物の錠剤
偽物か本物か…?特に子供に薬を買う場合などには、
その製品が本物かどうか細心の注意を払いたいものです。
 
色は、本物の質を証明するための大事な要素です。
安全インキは、ユニークな見た目をつくることや、蛍光といった特定の光にのみ反応することができます。
このような機能を用いれば、基層に(マイクロテキストやホログラムを搭載することで)見えない蛍光プランシェット、ウォーターマーク、隠れた暗号、細かな模様などを描くことも可能です。ナノ、法医学タガントをインクやコーティングに組み合わせてパッケージの塗装に利用するという手もあります。
タガントとは複製が不可能なかたちにつくられた素材や化学物質です。パッケージに組み込むことで、法医学タガントは特定の研究所の機材により検知される仕組みです。
持ち運び可能な機器も存在し、最初の検知はこれで簡易的に実施されることもあります。
 
色や画像が変わる仕掛けが施されたホログラムも使用され、これには、摩擦や熱で画像または文字が現れるサーモクロミックインクが導入されていることもあります。
 
X-Rite:業界ごとに違う技術を使い分けるのが効果的なのでしょうか?例えば商品、医薬品、化粧品、アパレルなど…。
 
Crosfield:医薬品、スピリット、タバコ業界などでは、規則により使用できる技術に制限があります。思い通りの色やグラフィックスの邪魔をしないような技術を採用することが基本ですので、パッケージのデザイン(包装 色の管理)やブランドイメージも大事な要素です。
 
特定の技術にはそれの得意とする機能が付随するものです。例えば、認証の意味を持つものや、不正な開封がされていないか確認する効果がこれに含まれます。ブランド製品にぴったりなのがそれの正当性を証明するためのホログラムです。
ワイン、スピリット、医薬品の検知や確認作業にタガントや隠れた暗号が使用されます。
高音のブランド製品ではこれの両方が採用されていることすらあります。
 
 
偽造品のドライヤー
多くの偽造品と同様に、このドライヤーには水に落ちた時の感電防止機能が備わっていません。
画像:consumerreports.comより
 
X-Rite:ブランド所有者が実践することのできる偽物対策はありますか?
 
Crosfield:私のおすすめをいくつかご紹介しましょう。
 
  1. まずは問題を特定すること。偽物、製品の類似品、詰め替え、不正開封など、何を対象としているのですか?
  2. 内外のステークホルダーと話し合い、パッケージとグラフィックスの役割を把握、どのパッケージの構成要素が対象となるか理解しましょう。キャップ、ラベル、リーフレット、カートン、タグなどがこれにあたります。カートン、シール、ラベル、パッケージ内側のフォイルなど、複数の構成要素を扱う場合にはその内のどれに変化を適用することができないのかを判断するようにしてください。
  3. 目的を明確にしましょう。消費者を安心させることが目的ですか?それとも商品のトラッキングですか?
  4. セキュリティ、ラベリング、パッケージングのサプライヤーと話し合い、必要な安全性、目的達成との兼ね合い、製造工程の中にどのように変化を取り入れるのが可能なのかといった点を考慮しながら、最善の策を導き出しましょう。
  5. サプライチェーンと小売システムの中の、どの場面で製品やパッケージの確認を行うのか決定しましょう。また、それを行うのは誰でしょうか?
  6. 偽造品はあなたの施策をかいくぐろうとするでしょう。そこで、選択する技術が今後、継続的にアップグレード可能であるか検討することも重要です。
 
X-Rite:最新の偽造対策技術として、何か素晴らしい例はありますか?
 
Crosfield:技術として素晴らしいものはたくさんありますが、その中でもいくつか厳選すると以下のようになります。
 
  • ナノコーティング(複製防止および性能の向上):書記素
    レベルの高いインクや量子ドットインクがこれにあたります。
  • リモートID機能の搭載されたタガントテクノロジー
  • 導電性インクを使用したスマートパッケージ
  • 埋め込みタガントを用いた3D添加テクノロジー
  • モバイル端末からの認証が可能な隠し画像/暗号
一部はまだ、開発されてから時間の経っていない発展期にある技術です。さらに、中には、他のテクノロジー開発から派生して考案された技術もあります。
 
 

X-Riteが御社のためにできること

色の一貫性を守ることで、消費者は容易に企業のブランドイメージを認識することができます。
X-Rite eXactといったカラーマネージメント技術は、製造業者による一貫した色の管理を可能にし、サプライチェーン全体を通したブランドイメージの質を確保します。
詳しくはお気軽にお問い合わせください。
 

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11_色彩値 色を数値で表す

これまで濃度に関連する測定値に関して説明して来ましたが、今回からLabなどの色彩値について簡単に説明していこうと思います。
 
大雑把に言って濃度が色材量に関連する値であったのに対して、色彩値は人の色の見え方に関連する値になっています。
「見え」そのものではなく、その中の1つの重要な要素で、「見え」に関連する値ということになります。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、「見え」の要素には色彩以外にも、表面のツヤ(グロス成分)やテクスチャー(表面の微小構造)、光の反射の方向分布、周辺色、人の知覚/認知など多くの要素が影響します。
色彩値自体が意味するところは、
 
「色彩値が同じ2つの色は指定された環境および条件のもとで平均的な色覚をもつ人にとって同じに見える」
 
ということです。
 
現実的には、色彩値が同じ2つの色は概ね同じに見えると考えても良いのではないかと思いますが、色彩値が同じ値を示しているにもかかわらず「見え」が違うという問題が発生した際には、常にこの本来の意味に立ち返って考えてみてください。
 
色彩値をあらわすインデックスにはさまざまなものがありますが、大体どの色彩値も3つの独立した値で表されているようです。
これは、人の目の中の色を知覚する受光器である錐体に3つのタイプがあるためです。
錐体は大雑把に言うとR・G・Bに感度のある受容体で構成されています。
これらの色彩値の中でも世界中で最も一般的に使用されているインデックスはCIE Labという色彩値です。
これはCIE(国際照明委員会)が定義したLabという意味でL*a*b*とも記載されます。
(Labには他にもHunt Labなども存在するため、CIE Labには「*」を付けてL*a*b*と記載します)
 
L*は明度(明るい・暗い)を表し、色味の情報を持ちません。
L*=0は全く光が反射(もしくは透過)しない、光を完全に吸収する物体の明度になります。
L*=100は完全拡散反射の白(白いチョークはこれに近い白になります)の明度を表します。
* 完全拡散反射とは光を入射すると全ての方向に同じ輝度で反射し,反射率が1.0の反射を指します。
 
a*は緑から赤にかけての色味の強さを表します。0は緑でもなく赤でもない色味で、-(マイナス)の値は緑味を、+(プラス)は赤味の色を表します。それぞれ絶対値が大きくなるほど色味が強くなることを意味します。
 
b*は青から黄にかけての色味の強さを表します。0は青でもなく黄でもない色味で、-(マイナス)の値は青味を、+(プラス)は黄味の強さを表します。こちらもそれぞれ絶対値が大きくなるほど色味が強くなることを意味します。
 
これら3つの値はそれぞれ独立したインデックスになっているので、それぞれを3つの直交する座標軸にとって3次元の直交座標系で表現します(図-19)。これをL*a*b*色空間と呼びます。
 
 
L*a*b*色空間
図-19 L*a*b*色空間
 
このL*、a*、b*の3つの数値を指定することで、色を一意に指定できる仕組みになっています。
たとえば、L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00と指定すると図-20のようなPantone 1585Cであらわされるオレンジと一意に決まります。
 
 
L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00のオレンジ
図-20 L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00のオレンジ
 
このL*a*b*色空間はマンセルシステムによる色指定を数値によって置き換えられるよう開発された科学的なシステムです。
マンセルシステムでは色を視覚的に均等に分布するよう配置・定義することで、色を記号や番号で指定できるように開発された視覚ベースのカラーオーダーシステムになっています。(機会があれば、いつか、このシステムについても触れてみたいと思います。)
 
 
マンセルツリー
図-21 マンセルツリー
 
このシステムは長い期間にわたって多くの人に視覚的な均等性が支持されてきたシステムだったため、数値的なL*a*b*色空間もこのシステムに概ねマッチすることを意図して開発されています。
 
 
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グローバルに資材調達するテキスタイル業界のカラー評価と管理

コスト削減や、需要の拡大に対応して、アメリカのテキスタイル業界やアパレル業界各社は、グローバルでの資材調達へとシフトしています。ノースカロライナ州立大学の研究によると、この傾向は貿易協定の進展を背景により顕著になっており、結果として、製造業者の多くは、高品質な資材を低価格で提供することのできるサプライヤー探しにプレッシャーがかかっています。
 
 
資材調達
 
資材は製品の要であり、複数の異なる材料を元に事業を展開するのは簡単ではありません。この課題はシンプルなカラーマネージメントツールを導入することで解決できます。この記事では、そのシンプルなツールによって、どれだけ大きな効果が生まれ、御社の色にまつわる業務に革新をもたらし、より経済的な資材調達が可能になるかご説明しましょう。
 
染料の色のチェックは製造ワークフローの一部であり、多くの企業で注意が払われているにも関わらず、生地の色や素材の確認は見落とされている場合があります。例えば、ウールやコットンの場合を考えてみましょう。アジアで生産される生地と米国南部で生産される生地には大きな違いが見られます。生地が異なれば、染料の染み込み具合が異なります。さらに、布地の色と染料の反応にも変化が見られるでしょう。
 
例えば目の前にわずかに異なる2種類の生地があるとします。これに同じ染料を使うと、結果には違いが見られるものです。さらに、この2つを縫合わせてセット商品にしてみると、違和感はより顕著なものになるはずです。質の高い布地を求める人が、そんな一貫性のない製品にお金を払う訳がありません。
 
 
素材の色
 
解決策は意外とシンプルです。製品の製造を行う前に素材の色をしっかりと確認しましょう。
 
 

Ultimate Textile社のカラーマネージメント

 
染色前の布地から顧客の要望に合わせて、室内装飾品、最新技術を搭載した防火服、防弾ベスト、トートバッグといった製品を製造し、長年エックスライトのユーザーであるUltimate Textile社にどのような工程を導入しているのかお話を伺いました。
 
彼らが扱う多くの生地が、世界の様々な場所から輸入した、天然素材でつくられています。経営者のアンソニー・ガリエロ氏は「素材が天然なので、それぞれ大きく色の違いが見られます。だからこそ、最初に、素材に基づいて、ブリーチングやソーシングで色を標準化するのです」と説明しています。
 
こちらが、Ultimate Textile社が、布地の一貫した色を確保するために実施する、カラーマネージメントの流れです。
 

1.仕入れられた生地の色を正しく把握

製造工程では分光測色計で色の情報を取得、また色の精度を評価します。多くのテキスタイル業界の企業ではCi7800 といったベンチトップデバイスが使用されますが、Ultimate Textile社では持ち運びに便利なCi64UVが採用されています。ガリエロ氏は、「Ci64UVは、工場内で自由に持ち歩き、様々な素材の色の計測に使え、iMatchにデータをダウンロード、さらにレポートの出力までできるので、大変便利です」と語ります。
 
 
材料見本をエックスライトCi64UVで確認
材料見本をエックスライトCi64UVで確認
 

2.染料の色づくり

分光測色計により計測された反射率はエックスライトのColor iMatchソフトウェアに取り込まれ、これと染料の反射率とのマッチング、特定の布地の上で正しい色を表現することのできる最適な解を弾き出します。染め上げには赤外線染色機を使います。こうして、ブレを最小限に抑えた色の複製に成功することができるのです。複数の機械が組み合わさった製造環境であるからこそ、色を包括的に把握するためにColor iMatchが利用されています。
 
 
材料見本をエックスライトCi64UVで確認
 
ガリエロ氏は言います、「結果的に、人間の勘に頼ることは高くつく。研究段階で100分の1gの違いが生じると、製造時にこれは何千倍の欠陥となって現れます。ラボでのエラーが生産工程では致命的なミスになるのです。」
 

3.多様な光源でビジュアル評価を行う

分光測色計カラーマネジメントソフトウェアを活用し、色が狙い通りに再現されているかどうかを知ることができます。しかし、これに加えて、組み上がった後に各部分が期待通りの色であるかを確認することも重要です。あらゆる光の当たり具合で色の変化を評価してください。これには標準光源ブースが便利でしょう。Ultimate Textile社では、エックスライトのライティングブースを使い、サンプル検査室、染色所、ラボ各所において正しい色が再現されているか確認が行われています。
 
 
 
Spectra Light QC
エックスライトのSpectra Light QCを使い布地サンプルの色を比較する様子
 

賢い投資で大きなリターンを

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10_ドットゲインの測定と計算の仕組み

今回はビジュアルドットゲインとメカニカルドットゲインの測定および計算方法について説明します。
 
まず、ビジュアルドットの測定手順は以下のようになります。
 
①  基材(用紙)を測定
②  ベタパッチを測定
③  指定された名目%のアミパッチを測定
 
たとえばシアンの50%のドットゲインを測定する場合、図-17のような順番で測定することになります。
この際、用紙やベタパッチはドットゲインを求めるアミパッチにできる限り近いパッチを測定します。
(測定器によっては用紙やベタパッチの測定は初回のみ求められます。)
 
 
照明光のもぐりこみによる光学ドットゲイン
図-17 カラーバー上のドットゲイン測定パッチ
 
このようにして求められる数値はアミ点面積率(%)になります。
ドットゲインは測定されたアミ点面積率(%)から名目ドット(%)を引き算することで算出します。
たとえば、上の例で測定したシアンのアミ点面積率が64%だったとすると、そこから名目ドット(%)の50%を引き算して14% がドットゲインということになります。
 
ドットゲイン
 
ここで、アミ点面積率の算出自体は測定器内部で実行されますが、以下のような計算で導かれています。
 
たとえば、図-18の左図のアミ点のエリアを右図のように寄せ集めて、これが全体に占める面積の割合(ここでは、マゼンタのアミ点面積率)を a とします。(領域全体を1として考えます)
測定によるマゼンタのベタ濃度(白紙基準濃度)が Ds だったとすると、マゼンタの画像部の反射率は 10-Ds となります。
 
つまり、全反射におけるマゼンタドットによる反射の寄与は面積率X反射率で a ×10-Ds です。
今度は用紙からの反射の寄与分を考えます。用紙の面積率は全体が1としたので 1-a になります。
白紙基準濃度を使用しているので用紙の濃度は0、つまり反射率は1として考えます。
用紙からの反射の寄与は1×(1-a) となります。
マゼンタアミ点からと用紙からの反射をあわせて全領域からの反射は a ×10-Ds + 1×1-a
これがアミ点全領域からの反射率と等しくなるわけです。
アミ点全領域からの反射率はアミ点パッチの測定濃度(用紙基準濃度)が Dt だったとすると 10 - Dt となります。
つまり、
10 - Dt = a × 10 -Ds + 1 × (1 - a) となるため
 
求めるアミ点面積率
 
が求めるアミ点面積率となります。
 
 
ドットを寄せ集めたアミ点の面積率
図-18 ドットを寄せ集めたアミ点の面積率
 
このように、測定濃度値からビジュアルドットゲインを計算する計算方式をマレイ・デイビスと呼びます。
 
 
一方、メカニカルドットゲインの場合はどうでしょうか?
メカニカルドットの面積率は光学的な太りを含まない物理的な面積ですから、一般的には濃度計ではなくiCPlateのようなCCDなどのカメラベースの測定デバイスのほうが適しています。
 
しかし、測定濃度値からこのメカニカルドットの面積率を求める方法もあります。
これが、ユール・ニールセンという計算方式で下のような計算式を使用します。
 
 
ユール・ニールセン
 
ポイントはマレイ・デイビス式の濃度値をnで割った値を使用することです。
このnの値をnファクターと呼び,理論からではなく経験値から帰納的に求めることになります。
このnファクターは基材やプレートのタイプによって異なります。
一般的にはプレートメーカー*などからこのnファクターを入手します。
自分でnファクターを求めたい場合は、面積率が50%と判明しているパッチを測定して、このアミ点面積率の値が50%になるようnを調整して求めます。
 
*メカニカルドットゲインは、通常プレートのキャリブレーションのために使用されます。