16_均等な色空間の試み
今回は前回説明した色彩値CIEXYZから均等な色空間への試みを説明しようと思います。
その前に、前回求めたCIEXYZで現される3次元の色空間でした。3次元の空間というのは人間にとってその位置関係を想像しにくいため、この3次元空間を特定の平面で切り取って、分かりやすい2次元平面として提示するxy色度図がよく利用されるようになっています。
この馬蹄形で有名なxy色度図(図-36)は皆さんもどこかで見たことがあるのではないでしょうか?
このxy色度図はCIEXYZから下の簡単な変換式から求められます。
ここで求められたxを横軸に、yを縦軸としてプロットすることでCIEXYZを2次元座標にプロットすることができるようになりました。
これはちょうどXYZ直交座標系においてX+Y+Z=1で切り取った面にXYZを投射した2次元平面を表しています。
図-36 xy色度図
この色つきの色度図は色を正しい色を表していないため、色彩屋さんたちは上のようにカラーで表示される色度図を嫌います。あまり重要なことだとは思いませんが...。ですので、図-37のように白黒の色度図を使用しましょう。
ここで、上側の曲線はスペクトル色(単色)を表すスペクトル軌跡と呼ばれます。その上にプロットされている数値はスペクトルの波長を表しています。
点線は輝度が0となる純紫軌跡と呼ばれます。
人の目に知覚される色はすべてこの馬蹄形の内側にプロットされることになります。馬蹄形の中心に行くほど彩度が失われ無彩色になります。
図-37 白黒のxy色度図
X,Y,Zの値を入力すると色度図上にプロットされるものを作ってみました。遊んでみてください。
このように作成されたXYZ色空間と、そこから派生したxy色度図により色を数値で指定するすることができるようになりました。しかし、これらの色空間や色度図にマンセルの視覚的に均等に配置された色をプロットしてみると、この色空間はどうも私たちの視覚に対して均等な空間になっていないようでした。
図-38 視感反射率Yとマンセルバリューの比較
このグラフを良く見るとY=20 でV=5で真ん中ぐらいの明るさになっています。つまり,20%ぐらいが白になると人は概ね半分ぐらいの明るさに見えることになります。
写真のグレーバランスカードは18%グレーのカードを使用していたのはこのためです。
また、5本に1本ぐらい白髪が生えると「ずいぶん白くなりましたねー」と言われるのもここに原因があります。
図-39 xy色度図にプロットした等間隔のマンセル色(V=5)
このような均等でない色空間は、色彩値の絶対値はもとより、色を生産する産業界にとってより重要な役割を持つ色差の計算に悪い影響を与えてしまいます。
このため、色彩学者はより均等な色空間を求めて改善を重ねることになります。
途中さまざまな均等色空間への挑戦が試みられますが、最終的に1976年にCIEから現在最も広く使用されているL*a*b*の色空間が提案され、多くの色管理の現場で使用されています。
XYZからの変換式は
L*に関しては、
a*,b*に関しては、
ここで
(X⁄Xn) および f (Z⁄Zn) に関しても同じ
ここでXn Yn Znはイルミナントの白色点のX,Y,Zを意味します。
となります。
こうして求められたL*a*b*の色空間は図40のように明度のL*とマンセルバリューにはほぼ線形の関係がとられていると共に、図41のようにa*-b*色度も概ねマンセルの色票を円形に配置するよう均等な空間となっています。
図-40 L*とマンセルバリューの関係
図-41 a*b*色度図にプロットした等間隔のマンセル色(V=5)
L*a*b*空間の特徴を以下に挙げておきます。
- L*は明度をあらわす軸
- a*は緑―赤軸で(+)方向に進むと赤の色味が強く、(-)方向に進むと緑の色味が強くなる
- b*は緑―赤軸で(+)方向に進むと黄の色味が強く、(-)方向に進むと青の色味が強くなる
- XYZからの非線形な変換によって数値計算によって導出することができる
- 知覚的に概ね均等な色空間である
- イルミナントの白色点Xn,Yn,Znで正規化されているため,白はどの照明でも同じような値となる
- へリングタイプの反対色ビジョンセオリーへの対応が盛り込まれている
図-42 L*a*b*色空間
具体的には図-42にあるような色空間になっています。