Xrite Japan

色管理

11_色彩値 色を数値で表す

これまで濃度に関連する測定値に関して説明して来ましたが、今回からLabなどの色彩値について簡単に説明していこうと思います。
 
大雑把に言って濃度が色材量に関連する値であったのに対して、色彩値は人の色の見え方に関連する値になっています。
「見え」そのものではなく、その中の1つの重要な要素で、「見え」に関連する値ということになります。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、「見え」の要素には色彩以外にも、表面のツヤ(グロス成分)やテクスチャー(表面の微小構造)、光の反射の方向分布、周辺色、人の知覚/認知など多くの要素が影響します。
色彩値自体が意味するところは、
 
「色彩値が同じ2つの色は指定された環境および条件のもとで平均的な色覚をもつ人にとって同じに見える」
 
ということです。
 
現実的には、色彩値が同じ2つの色は概ね同じに見えると考えても良いのではないかと思いますが、色彩値が同じ値を示しているにもかかわらず「見え」が違うという問題が発生した際には、常にこの本来の意味に立ち返って考えてみてください。
 
色彩値をあらわすインデックスにはさまざまなものがありますが、大体どの色彩値も3つの独立した値で表されているようです。
これは、人の目の中の色を知覚する受光器である錐体に3つのタイプがあるためです。
錐体は大雑把に言うとR・G・Bに感度のある受容体で構成されています。
これらの色彩値の中でも世界中で最も一般的に使用されているインデックスはCIE Labという色彩値です。
これはCIE(国際照明委員会)が定義したLabという意味でL*a*b*とも記載されます。
(Labには他にもHunt Labなども存在するため、CIE Labには「*」を付けてL*a*b*と記載します)
 
L*は明度(明るい・暗い)を表し、色味の情報を持ちません。
L*=0は全く光が反射(もしくは透過)しない、光を完全に吸収する物体の明度になります。
L*=100は完全拡散反射の白(白いチョークはこれに近い白になります)の明度を表します。
* 完全拡散反射とは光を入射すると全ての方向に同じ輝度で反射し,反射率が1.0の反射を指します。
 
a*は緑から赤にかけての色味の強さを表します。0は緑でもなく赤でもない色味で、-(マイナス)の値は緑味を、+(プラス)は赤味の色を表します。それぞれ絶対値が大きくなるほど色味が強くなることを意味します。
 
b*は青から黄にかけての色味の強さを表します。0は青でもなく黄でもない色味で、-(マイナス)の値は青味を、+(プラス)は黄味の強さを表します。こちらもそれぞれ絶対値が大きくなるほど色味が強くなることを意味します。
 
これら3つの値はそれぞれ独立したインデックスになっているので、それぞれを3つの直交する座標軸にとって3次元の直交座標系で表現します(図-19)。これをL*a*b*色空間と呼びます。
 
 
L*a*b*色空間
図-19 L*a*b*色空間
 
このL*、a*、b*の3つの数値を指定することで、色を一意に指定できる仕組みになっています。
たとえば、L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00と指定すると図-20のようなPantone 1585Cであらわされるオレンジと一意に決まります。
 
 
L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00のオレンジ
図-20 L*=65.45、a*=57.04、b*=70.00のオレンジ
 
このL*a*b*色空間はマンセルシステムによる色指定を数値によって置き換えられるよう開発された科学的なシステムです。
マンセルシステムでは色を視覚的に均等に分布するよう配置・定義することで、色を記号や番号で指定できるように開発された視覚ベースのカラーオーダーシステムになっています。(機会があれば、いつか、このシステムについても触れてみたいと思います。)
 
 
マンセルツリー
図-21 マンセルツリー
 
このシステムは長い期間にわたって多くの人に視覚的な均等性が支持されてきたシステムだったため、数値的なL*a*b*色空間もこのシステムに概ねマッチすることを意図して開発されています。
 
 
カラーマネジメント #色の管理 #マンセル表色系 #カラー評価