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色管理

07_白紙基準濃度って何だ?

濃度測定の設定項目でもう一つ大切な要素が用紙濃度を含んだ濃度を測定するか、含まない濃度を測定するかという設定です。
用紙濃度を含まない設定は「マイナス用紙濃度」といったり「白紙基準濃度」、「相対濃度」「pap」などと呼んだりします。全て同じ意味です。
一方、用紙濃度を含む濃度は「絶対濃度」や「白色基準濃度」「abs」などと呼び、こちらも全て同じ測定モードになります。
 
マイナス用紙濃度は、単純に測定濃度から用紙の濃度を差し引いた濃度です。
図-12 の例をとると、マゼンタの測定(絶対)濃度が1.50として、用紙のマゼンタ濃度が0.08だとすると単純に1.50-0.08=1.42として1.42がマイナス用紙濃度となります。
 
なぜこの用紙濃度を差し引いた濃度を使用するのでしょうか?
これまで何度も説明してきましたようにインキ内の色材量のみに注目した濃度値が欲しいためです。
用紙の濃度はインキ塗膜内の色材量とは関係しません。ですのでこの分を差し引きたいわけです。
しかしながら、白紙濃度を差し引いただけで白紙基準や相対濃度といった呼び方は何か不自然なような気がしませんか?
私も当初はこれらの呼び方に違和感があったのですが、良く考えてみると、濃度は常用対数のlog10をとるわけですから、
反射率の逆数(吸光率と言っておきます...)10(濃度値)に戻した場合、
マイナス用紙濃度の場合の吸光率は10(絶対濃度-用紙濃度)、つまり10(絶対濃度)/10(用紙濃度)となり、
用紙濃度を基準とした比となることが分かります。
絶対濃度の場合は10(濃度値)の代わりに完全拡散白色の反射率=1の逆数、つまり1が使用されます。
このため白色基準などと呼ばれます。
 
 
絶対濃度とマイナス用紙濃度
図-12 絶対濃度とマイナス用紙濃度
 
この場合も絶対濃度とマイナス用紙濃度どちらを使用するかは状況によります。
生産現場、つまり印刷機横での色材量(インキ塗出量)管理ではマイナス用紙濃度の利用価値があると思います。
また、見た目の濃淡という意味では用紙の濃度も含んで判断するため、絶対濃度のほうが目視との相関に優れるといえます。
 
印刷の現場ではいずれを使用しても問題ないと思いますが、どちらかに決めて運用することが大切です。
 
これまで「濃度ステータス」や「POLについて」などでも濃度設定について取り上げてきましたが、これらの設定は大きく分けると2つの組み合わせに分けることができます。
 
1つは印刷現場での色材量(インキ塗出量など)管理のための指標としての濃度利用で、
「ステータスE」+「偏光フィルター(POL)あり」+「マイナス用紙濃度(pap)」
の組み合わせがよく使用されます。
 
2つ目はQA的というか見た目との相関を重視した濃度利用で、
「ステータスT」+「偏光フィルターなし」+「絶対濃度(abs)」
の組み合わせで使用されます。
 
濃度というのはどちらかというと最終製品における視覚的特性の基準に用いるというよりも、生産の現場における管理指標として使用される側面が大きいため日本では、比較的(1)での設定のほうが多く利用されているように思われます。
(ちなみに、米国では(2)が主流です。)
 
ただし、これらの組み合わせが一般的だというだけで、必ずしもこれらの組み合わせでなければ駄目だというわけではありません。
大切なことはこれらの設定が異なると濃度値が変わるということです。
このため、自社での濃度基準がどの設定で定義されているかを正しく認識し、常に同じ設定モードで濃度を運用することが大切です。