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色管理

10_ドットゲインの測定と計算の仕組み

今回はビジュアルドットゲインとメカニカルドットゲインの測定および計算方法について説明します。
 
まず、ビジュアルドットの測定手順は以下のようになります。
 
①  基材(用紙)を測定
②  ベタパッチを測定
③  指定された名目%のアミパッチを測定
 
たとえばシアンの50%のドットゲインを測定する場合、図-17のような順番で測定することになります。
この際、用紙やベタパッチはドットゲインを求めるアミパッチにできる限り近いパッチを測定します。
(測定器によっては用紙やベタパッチの測定は初回のみ求められます。)
 
 
照明光のもぐりこみによる光学ドットゲイン
図-17 カラーバー上のドットゲイン測定パッチ
 
このようにして求められる数値はアミ点面積率(%)になります。
ドットゲインは測定されたアミ点面積率(%)から名目ドット(%)を引き算することで算出します。
たとえば、上の例で測定したシアンのアミ点面積率が64%だったとすると、そこから名目ドット(%)の50%を引き算して14% がドットゲインということになります。
 
ドットゲイン
 
ここで、アミ点面積率の算出自体は測定器内部で実行されますが、以下のような計算で導かれています。
 
たとえば、図-18の左図のアミ点のエリアを右図のように寄せ集めて、これが全体に占める面積の割合(ここでは、マゼンタのアミ点面積率)を a とします。(領域全体を1として考えます)
測定によるマゼンタのベタ濃度(白紙基準濃度)が Ds だったとすると、マゼンタの画像部の反射率は 10-Ds となります。
 
つまり、全反射におけるマゼンタドットによる反射の寄与は面積率X反射率で a ×10-Ds です。
今度は用紙からの反射の寄与分を考えます。用紙の面積率は全体が1としたので 1-a になります。
白紙基準濃度を使用しているので用紙の濃度は0、つまり反射率は1として考えます。
用紙からの反射の寄与は1×(1-a) となります。
マゼンタアミ点からと用紙からの反射をあわせて全領域からの反射は a ×10-Ds + 1×1-a
これがアミ点全領域からの反射率と等しくなるわけです。
アミ点全領域からの反射率はアミ点パッチの測定濃度(用紙基準濃度)が Dt だったとすると 10 - Dt となります。
つまり、
10 - Dt = a × 10 -Ds + 1 × (1 - a) となるため
 
求めるアミ点面積率
 
が求めるアミ点面積率となります。
 
 
ドットを寄せ集めたアミ点の面積率
図-18 ドットを寄せ集めたアミ点の面積率
 
このように、測定濃度値からビジュアルドットゲインを計算する計算方式をマレイ・デイビスと呼びます。
 
 
一方、メカニカルドットゲインの場合はどうでしょうか?
メカニカルドットの面積率は光学的な太りを含まない物理的な面積ですから、一般的には濃度計ではなくiCPlateのようなCCDなどのカメラベースの測定デバイスのほうが適しています。
 
しかし、測定濃度値からこのメカニカルドットの面積率を求める方法もあります。
これが、ユール・ニールセンという計算方式で下のような計算式を使用します。
 
 
ユール・ニールセン
 
ポイントはマレイ・デイビス式の濃度値をnで割った値を使用することです。
このnの値をnファクターと呼び,理論からではなく経験値から帰納的に求めることになります。
このnファクターは基材やプレートのタイプによって異なります。
一般的にはプレートメーカー*などからこのnファクターを入手します。
自分でnファクターを求めたい場合は、面積率が50%と判明しているパッチを測定して、このアミ点面積率の値が50%になるようnを調整して求めます。
 
*メカニカルドットゲインは、通常プレートのキャリブレーションのために使用されます。
 

HOW DESIGN LIVEでの発表内容はもうご確認いただけましたか?

エックスライトPantoneR は、色管理の科学やカラーマネジメントソリューションをご提供し、ブランドやコンバーターでパッケージのデザインや色の要求を実現するお手伝いをいたします。先週、アトランタにて「HOW Design LIVE2016」が開催され、エックスライトは出展いたしました。ここで発表されたデザイナーが求める色を実現する最新のカラーコントロールツールをご紹介いたします。

「HOW Design LIVE 」は単なるカンファレンスではなく、業界をリードするデザイナーや企業が一堂に会し、インスピレーションとクリエイティビティを披露する場です。弊社はこの名誉ある場において、PantoneLIVE Cloud™, PantoneLIVEDesigner, Digital Drawdowns, Digital Tolerances Guidesを発表しました。


 

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以上の図では、よく起こりがちな、パッケージの工程が進むにつれて、色が変わっていってしまう状況を説明しています。PantoneLIVEは、ターゲットとする色をデジタルカラーデータとしてを的確に共有することで、このような色の伝達のズレが発生する可能性を排除します。

 

今日は皆様に、「HOW Design LIVE」で公表した、弊社の最新技術をご紹介します。


 

1 PantoneLIVEクラウド

PantoneLIVEがあれば、サプライチェーンの全体が繋がり、より素早く正確なデジタルカラーを共有できるようになります(カラーマネジメントソリューション)。つまり、クライアントであるブランドとデザイナーが、インク、プリプレス、コンバーターや、印刷といった各工程の担当者たちと、全く同じデジタルカラーデータに基づき作業が行うことが可能となります。

 

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PantoneLIVE Librariesには現在、1万種類のPantone Colorsが蓄積されています。とはいえ、多くの場合、ブランド独自の色を利用する必要があることから、PantoneLIVEクラウドにはオリジナルカラーの生成機能も搭載いたしました。Tiffany、VeuveClicquotといった名だたるブランド企業で利用されるように、Pantoneカラーをつくることができます。ブランドカラーの拡散は防ぎたい、または、サプライヤーとのカラーデータの共有においてセキュリティを確保したいということであれば、「プライベートクラウド」をご活用いただけます。

 

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パントンカラーの一例「Veuve CliquotYellow」


 

2 AdobeR IllustratorR用PantoneLIVE デザイナーライセンス&プラグイン

わたしたちが色の言語をコミュニケーションするのはこのような方法です。エックスライトは最新のPantoneカラーをデザイナーが使うAdobeIllustratorに届け、デザイナーはエックスライトのプラグインツールでライブラリーを生成できます。Adobe Illustratorがデジタル・スタンダードにアクセスし、実際に最終のパッケージではどのような色の仕上がりになるかをより正確に確認することが可能になります。

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AdobeIllustrator でPantoneLive viewerを使えば、デザイナーは異なる素材でどのようにカラーが再現されるかを確認できます。この結果、求めるカラーと実現可能なカラーの間でどちらかを選ばなければならない状況もあるかもしれません。厳しい事実ですが、これは物理的に実現する際には避けられないことです。最終的には、どの素材を選ぶのか、どの印刷方式を選ぶのかは経済的観点からなされる場合が多いでしょう(カラーマネジメント印刷)。デザイナーがにカラーのコミュニケーション手段やツールを与えることは、最良の結果を予測し、実現する助けとなるでしょう。

 

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左の画像は、インクの色や印刷基材がどのようにデザインに影響を与えるかを示しています。PantoneLIVEをデザイナーが使えば、求める色が最終製品ではどのように見えるのかを知ることができ、クラフトペーパー用のスタンダードを使用することでより最適なカラーを実現することができたでしょう。デザイン段階と全く同じ色ではないかもしれませんが、このデザインが印刷に行く前にデザイナーは現実的な色を確認することができたでしょう。

 

3 Pantone Digital Drawdownsのご紹介

もちろん、プルーフや物的なサンプルは必要でしょう。しかし、デジタルカラーを導入することで、色に関わる不用意な誤解を最小限にとどめることができます。誰もが同じソースからデジタルカラーデータを取得できるシステムを構築することで、カラーの精度向上と市場導入までの時間が大幅に改善されるでしょう。

特定の素材で色がどのように見えるかを示す段階では、インキ会社に行ってドローダウンを取得する必要はもうありません(インクカラーソリューション)。弊社に蓄積された科学技術により、皆さんの作業工程を大幅に改善することができます。手作業により計測された高精度のデジタルドローダウンは、使いやすく、破れにくく、見本サンプル直接貼り付けて、プルーフや試作品やプレスシートの出来上がりを確認するのに便利です。

 

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4  Pantoneデジタルトリランスガイドのご紹介

さらに素晴らしいツールとして、デジタルトラレンスガイド(DegitalTolerance Guide)を活用し、予想される色の変化を視覚的に捉えることもできます。デルタE 2.0または3.0で「十分だろう」と考えていた昨日から 、“正確な色の変化の理解”ができるようになるでしょう。

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色の変化、デルタEがどのような見た目になるか考えでみたことはありますか?Pantoneデジタルトラレンスガイドで、その全てをご確認いただけます。

 

簡単に使え、色を事前に予測でき、色にまつわる議論の時間を大幅に減らし、意見の相違を現象することのできるツール(カラーマネジメントソリューション)、PantoneLIVECloud and Designer、DigitalDrawdownsそして、DigitalTolerances Guidesが確認作業を簡素化し、マーケットへの距離を一段と短くします。

詳しくは、無料のオンデマンド“パッケージデザイン&色の一貫性” ウェブセミナーをご覧ください!

 

 

 

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09_ビジュアルドットゲインとメカニカルドットゲイン

今回はビジュアルドットゲインとメカニカルドットゲインの違いを説明します。

まず、印刷の仕上がり、諧調再現をチェックするのはビジュアルドットゲインの役目になります。 ドットゲインは印刷時の印圧などにより、基材(用紙)上の色材が押しつぶされて物理的な太り(広がり)が発生しますが、基材上のドットにはこれ以外にも光学的な太りの要素が存在します。

図-15に示すように、本来は紙の領域によって反射される光などが、用紙内にもぐりこみ、インキの下にトラップされて反射されず、結果として諧調性が暗い方向にシフトします。そのほかにも照明がインキの厚みによってできる影(エッジロス)によっても微少ながら諧調が暗くなります。 このような光学的な影響を「インキが太った」分に繰り込んでドットゲインとして勘定したものを光学ドットゲインと呼びます。 「物理的な太り」とこの擬似的な「光学的な太り」をあわせたものがビジュアルドットゲインとなります。

f:id:xritejapan:20170407170242j:plain 図-15 照明光のもぐりこみによる光学ドットゲイン

一方、物理的なドットゲインのことをメカニカルドットゲインと呼びます。これは純粋にドット領域の太り量を指します。 印刷機の印圧の調整やCTP版での印字領域のキャリブレーションチェックなどに利用されます。

図-16の例をとると、プレート上で50%のドットサイズ(デザインの際のドットサイズ)が印圧などで用紙上で物理的に太り、このメカニカルドットゲイン分が6%、さらに光のもぐりこみなどによる光学的なドットゲインが8%上乗せされトータルのビジュアルドットゲインは6%+8%で14%ということになります。 最終的に50%でデザインされた諧調が64%のドットとして再現されたということになります。

f:id:xritejapan:20170407170732j:plain 図-16 ドットゲインの積み重ね

50%で意図したサイズが64%に印刷されたということで、なんだか間違えて印刷されたように印象がありますが、これは、これで問題ありません。ドットゲイン管理は諧調のキャリブレーションなので基準どおりにコントロールされていることが重要になります。たとえばJapan Color標準印刷では名目50%のドットは14%のビジュアルドットゲインを持つことが正解なのです。

Xrite 印刷    Xrite 色補正 Japan Color標準印刷認証

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08_ドットゲインについて

今回は濃度から派生する印刷品質の代表的な管理指標であるドットゲインについて説明します。

印刷という色再現方式は1つ1つのドットには諧調が無く、プロセス印刷の場合、色の要素はCMYKの各インキ色(1次色もしくはプライマリーと呼びます)と用紙色およびその重ね合わせのRGB色(2次色といいます)で固定されます。 そして、各ドットのサイズを小さくしておいて、十分離れた位置から見たときにドットの集合がフルカラーを再現するという並置加法混色の色再現になります。 ですから、このドットのサイズや個数による領域のカバー率を正しくコントロールすることが重要になります。

印刷の場合、さまざまな印刷方式はありますが、どんな方式でも色材を用紙(基材)に押し当て圧力をかけます。このため色材は潰れて広がります。

つまり、印刷されたドットは版上で作成したサイズよりも大きくなります。この大きくなる度合いをキチンとコントロールしなければ、諧調表現が定まらなくなり、安定した印刷品質を実現できなくなります。この意味でドットゲインは印刷の重要な指標となっています。 ベタ濃度や2次色が基準どおりに印刷されていてもドットゲインが基準から外れた場合諧調表現が変化し印刷されたイメージの色再現が変わってきます。(図-13 を参照)

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低いドットゲイン

 

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標準のドットゲイン

 

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高いドットゲイン

図-13 ドットゲインの違いによる影響

 

図-14にISOのオフセット向けドットゲインカーブを示します。 これらはCTPに対応したドットゲインカーブになっていて、コンベンショナルなアミ点ではコート紙でAもしくはB 上質でBもしくはCが推奨されています。またFMなどの非周期スクリーンではEのように高いドットゲインが用いられます。

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ちなみにJapan Color標準認証ではコート紙で名目50%のドットで14%のドットゲインが基準として指定されています。

本来、ドットゲインは印刷機のキャリブレーションのための指標なので、常に安定した値に管理されれば、これらの値に固執しなければいけない理由はありません。 しかし、印刷機の場合、プロファイルなどを適用しなくても(素の状態で)Japan Colorなどの標準の状態に近いことが望まれます。 このため、ドットゲインの値も業界標準に合わせておくことがよりスムーズなワークフロー構築のために重要になります。

ちなみに、ISOではデジタル印刷など必ずしもドットを使用しない印刷方式も視野に入れ、ドットゲインという用語は使用せず代わりにTVIトーン・バリュー・インクリース)という用語を使用するようになっています。

今回取り上げたドットゲインは見た目のドットゲイン、ビジュアルドットゲインに関して説明しました。

このドットゲインの値はマレイ・デイビスという測定方式で測定されます。 次回は、このビジュアルドットゲインと、もう1つのメカニカルドットゲインの違いを説明したいと思います。

 

 

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07_白紙基準濃度って何だ?

濃度測定の設定項目でもう一つ大切な要素が用紙濃度を含んだ濃度を測定するか、含まない濃度を測定するかという設定です。
用紙濃度を含まない設定は「マイナス用紙濃度」といったり「白紙基準濃度」、「相対濃度」「pap」などと呼んだりします。全て同じ意味です。
一方、用紙濃度を含む濃度は「絶対濃度」や「白色基準濃度」「abs」などと呼び、こちらも全て同じ測定モードになります。
 
マイナス用紙濃度は、単純に測定濃度から用紙の濃度を差し引いた濃度です。
図-12 の例をとると、マゼンタの測定(絶対)濃度が1.50として、用紙のマゼンタ濃度が0.08だとすると単純に1.50-0.08=1.42として1.42がマイナス用紙濃度となります。
 
なぜこの用紙濃度を差し引いた濃度を使用するのでしょうか?
これまで何度も説明してきましたようにインキ内の色材量のみに注目した濃度値が欲しいためです。
用紙の濃度はインキ塗膜内の色材量とは関係しません。ですのでこの分を差し引きたいわけです。
しかしながら、白紙濃度を差し引いただけで白紙基準や相対濃度といった呼び方は何か不自然なような気がしませんか?
私も当初はこれらの呼び方に違和感があったのですが、良く考えてみると、濃度は常用対数のlog10をとるわけですから、
反射率の逆数(吸光率と言っておきます...)10(濃度値)に戻した場合、
マイナス用紙濃度の場合の吸光率は10(絶対濃度-用紙濃度)、つまり10(絶対濃度)/10(用紙濃度)となり、
用紙濃度を基準とした比となることが分かります。
絶対濃度の場合は10(濃度値)の代わりに完全拡散白色の反射率=1の逆数、つまり1が使用されます。
このため白色基準などと呼ばれます。
 
 
絶対濃度とマイナス用紙濃度
図-12 絶対濃度とマイナス用紙濃度
 
この場合も絶対濃度とマイナス用紙濃度どちらを使用するかは状況によります。
生産現場、つまり印刷機横での色材量(インキ塗出量)管理ではマイナス用紙濃度の利用価値があると思います。
また、見た目の濃淡という意味では用紙の濃度も含んで判断するため、絶対濃度のほうが目視との相関に優れるといえます。
 
印刷の現場ではいずれを使用しても問題ないと思いますが、どちらかに決めて運用することが大切です。
 
これまで「濃度ステータス」や「POLについて」などでも濃度設定について取り上げてきましたが、これらの設定は大きく分けると2つの組み合わせに分けることができます。
 
1つは印刷現場での色材量(インキ塗出量など)管理のための指標としての濃度利用で、
「ステータスE」+「偏光フィルター(POL)あり」+「マイナス用紙濃度(pap)」
の組み合わせがよく使用されます。
 
2つ目はQA的というか見た目との相関を重視した濃度利用で、
「ステータスT」+「偏光フィルターなし」+「絶対濃度(abs)」
の組み合わせで使用されます。
 
濃度というのはどちらかというと最終製品における視覚的特性の基準に用いるというよりも、生産の現場における管理指標として使用される側面が大きいため日本では、比較的(1)での設定のほうが多く利用されているように思われます。
(ちなみに、米国では(2)が主流です。)
 
ただし、これらの組み合わせが一般的だというだけで、必ずしもこれらの組み合わせでなければ駄目だというわけではありません。
大切なことはこれらの設定が異なると濃度値が変わるということです。
このため、自社での濃度基準がどの設定で定義されているかを正しく認識し、常に同じ設定モードで濃度を運用することが大切です。
 

06_POL?

POLというのは濃度測定時に使用するフィルターで、Polarization Filterの略で偏光フィルターを意味します。
濃度測定の際にこのフィルターを使用した測定を行うことで有効な情報が得られる場合があります。
 
偏光フィルターは通常濃度測定のみに使用し色彩値測定(たとえばL*a*b*測定)には使用しません。
偏光フィルターの役割は測定する光の成分から表面反射の影響を除きます。
ですから、印刷物測定の場合、色材内部からの反射のみを評価したい場合に使用します。 印刷された基材(用紙)上のインキフィルムの塗膜内にどれだけ色材が含まれているかを判断する場合に有効なのです。
 
偏光フィルターによる測定の仕組みは、たとえば、照明する光をあらかじめ特定の方向に直線偏光させておいてからサンプルに照明します。
そうしておいて、受光側では照明側の偏光とは直交ニコルの方向性を持つ偏光フィルターを通して受光します。
 
通常、印刷物の観察のモデルおよび測定器の受光モデルは、図-9のように表面からの反射光と色材内部(基材での散乱も含む)からの内部反射の2つの要素を同時に受光して評価しています。
表面反射はインキがぬれた状態のウエットの場合と、乾燥後のドライの状態では反射状態が大きく変化します。 乾いたアスファルトの道路に水を撒くとアスファルトが濃く見えるようになりますが、これは、アスファルトの表面が撒かれた水によってスムーズになるため、表面反射が正反射方向に集中することで目に受光される表面反射の光量が小さくなるために生じます。 一方、色材内部からの内部反射は乾燥の前後で大きな変化はありません。このため、インキフィルム塗膜内の色材量を特定するには表面反射を除去した内部反射のみの測定が都合が良いのです。
 
 
POLフィルターなしの照明と受光
図-9 POLフィルターなしの照明と受光
 
POLフィルターを使用した測定では図-10のように表面反射の成分は受光器前のPOLフィルターでカットされてしまいます。 これは表面反射の光の性質が照明光の性質と同じ*ため、直交ニコルに配置したPOLフィルターをすり抜けることができないためです。
 
 
POLフィルターを使用した照明と受光
図-10 POLフィルターを使用した照明と受光
 
* 一般的に光子自体は特定の偏りを持っているとされています。ただ原子が放出する1つの光子は〖10〗^(-8)秒程度なので次から次へと放出される光子で構成される一連の光では平均化されて特定の偏りがありません。
POL測定では、直線偏光子などを使用して特定方向に偏りを持たせた光を照明として用います。
 
表面反射における反射光の偏りは、照明光の偏りと完全に同じというわけではありません。
たとえば、入射光面内に偏った光は屈折光の角度と直角となるブルースター角では全く反射されないため、偏光後の照明光から表面反射される光の一部は失われてしまいます。しかしながら、そうであったとしても、表面反射からの光は受光器前のPOLフィルターでブロックされてしまうため、内部反射のみの特性を受光できるということに変わりはありません。
 
このようなPOLフィルターのもう1つの大きな特徴は、高濃度部における濃度と色材濃度(インキ膜厚)との線形性の改善にあります。高濃度部ににおいては表面反射の影響が大きくなります。
つまり,暗い部分では表面からの少しの反射光でも濃度値に大きな影響をもたらすのです。
このため図-11にあるようにPOLなしの測定では高濃度部で濃度が頭打になり線形性が悪くなります。
これに対してPOLを使用した測定では方面反射による不要な拡散光が受光されないため高濃度部においても比較的良好な線形性を確保できることになります。
 
 
高濃度部におけるPOLあり/なしによる線形性の違い
図-11 高濃度部におけるPOLあり/なしによる線形性の違い
 
POLフィルターを使用した測定は、濃度でインキ膜厚(色材濃度)を管理するには効果的な方法といえます。
このため、印刷機の壷管理用の測定に(特にウエット・オン・ウエットのオフセット枚葉印刷では)多く使用されています。
ただ、私たちの実際の見た目の濃度は表面反射を含んだものを観察しています。このため、見た目との相関性を重視した濃度測定ではPOLを使用しません。また、色彩値測定などではPOLを使用した測定値は使用されません。
(POLを使用した色彩値はISOの色彩値とは認められていません。)
 
濃度測定にPOLを使用すべきか、使用すべきでないかは状況によります。
印刷の生産品質管理としては使用する価値は十分にあると思います。
しかし、かならずしもPOLを使用しなければならないということは無いと思います。
POLを使用しない場合のウエット濃度の測定では,ウエット濃度とドライダウン後の色彩値(L*a*b*)との相関をあらかじめキチンととった上で自社基準濃度(ハウス・スタンダード)を設定しておくことが重要になります。
 
いずれにしても、POLを使用した濃度測定を使用するか、POLを使用しない濃度測定を使用するか、どちらかにキチンと決めて運用することが重要になります。
 

もはや視覚評価だけでは十分ではない?

色/カラーは大切と言われますが、なぜでしょう?実際、製造過程において色は欠かせない要素です。ですが、思い通りの色を製品で実現することは、以前より難しいと感じる製造者が増え、こうした製品のブランドを持つ会社はより厳しい基準や許容値を満たすことを求めています。
 
 
実際、製造過程において色は欠かせない要素です。
 
なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?
 
色/カラーに関する技術が進化する一方で、顧客の要求は高度になっています。例えば、金属のパッケージ、パール加工、カスタムデザインのテキスタイル、鮮やかな新色を考えてみてください。様々な材料に対して色の一貫性を実現するのは困難になっています。
 
例えば、家庭用のウッドデッキを考えてみてください。昔は、ウッドデッキには灰色か茶色か2つの選択肢しかありませんでした。当時は、デッキ全体で色の調和がとれていれば、それはいい仕事として評価されていました。
 
しかし現在では、深い木目や、異国情緒溢れる色合いなど、あまりにも多くの選択肢が存在します。製造者は、2つや3つのパターンではなく、より多くの色の管理を行う必要があります。 つまり、今日では色を一貫して製造することが容易ではないのです。
 

パッケージもいい例でしょう。かつては店の棚に並んでいたのは印刷の施された箱ですが、今では、フォイルパウチ、ブリスターパック、複数の素材を使ったパッケージが目につきます。半透明で反射性のある素材において、特に、色の管理は難しくなり、ある種類でうまくいく方法が他の素材では必ずしも役に立ちません。

 
 
パッケージデザイン
上の写真は棚に並べられたパッケージデザインの様子です。パウチ、ラベル、カートン、ダンボールなどの色が視覚的に調和していません。これらは克服できる問題です。
 
布地であれ、プラスチックであれ、塗料であれ、コーティングであれ、あらゆる業界で同じことが言えます。かつて合格していた色はもはや十分ではありません。さらに、消費者もブランド側も、色に対してより要求が厳しくなっています。色合いが正しく表現されていないと、消費者は商品の前を通り過ぎて、ライバル企業の他の製品を手に取るでしょう。注目を得ることのできなかった商品は、不良在庫となり、しまいにはゴミ箱行きです。
 
これこそが、製造業者を苦しめる現状です。あなたは大丈夫でしょうか?
 
下の質問の1つにでも「はい」と答えたとしたら、色の選定工程に改善の余地があります。
 
* 色の評価のために屋外で、日昼光で確認を行っていますか?
* 評価や承認を得るために、他の人に写真をE-mailで送っていますか?
* どの色を製品として実現すればいいのか迷っていませんか?
* 昔は承認された色が、現在では却下されていますか?
 
Good Newsです。
見直しを開始するためには多くの時間、資金、労力はかかりません。
では、色の選定において最も起こりやすい間違いをご紹介しましょう。
 
 

1. 間違った照明

 
下の画像は、色の評価になぜ標準光源が必要かを説明しています。ご覧ください。光の種類によって、赤の色合いがどれだけ変化するのか、一目瞭然ですよね。
 
 
色温度
色温度が変化することで、見え方も大きく変わるのです。
 
では、もしあなたのオフィスや研究室に設置してある環境光が標準光源にどれだけ近いのか分からない場合は、どうすればいいでしょう?そんな時には、PANTONE® ライティング・インディケーター・ステッカーD50をお勧めします。このシールにはそれぞれ、上下2色のパッチが用意されています。2つがぴったり同じ色であれば、その場所は自然な日中の光と同じであると考えることができます。違いが見られれば、色の判断をする前に標準光源の下に移動すべきでしょう。
 
もちろん、お気づきのように、「PANTONE® ライティング・インディケーター・ステッカーD50」を使っても、蛍光灯、白熱灯、LEDなどの設置された店舗や家庭、オフィスでどのような見た目になるのかはわかりません。完成品が実際に、どのような色に見えるのかを知るための最善策は、標準光源ブースを使うことです。
 
特に、携帯電話のケースと携帯背面のカバー、車のサイドミラーといった、組み立て式の部品をつくる場合には、すべての色が調和する必要があるので注意が必要です。「完璧につくりあげた試作品」が、必ずしも、店舗やショールーム、家庭で思い通りの色に見える訳ではありません。
 
標準光源ブースはそれほど大きな投資ではありません。しかも、色の選定失敗ややり直しが減れば減るほど、その投資分は回収できることになります。標準光源ブースの活用については、視覚的に色を判断する際のコツ10選をご確認ください。
 

2. 色の認識能力についての過信

 
多くの人が、自分の視覚の不完全性に気づいていません。実際、これはあらゆる人に言えることです。男性の13人1人、女性の300人1人が、色の認識における何かしらの問題があると言われています。
 
 
視覚の不完全性
 
 
石原式色覚異常検査表
上の画像は石原式色覚異常検査表の一部です。左側の柄に「6」が、右側の柄に「2」が見えなければ、ひょっとすると、何かしらの色覚異常が起こっているかもしれません。
 
色の選定を担当する人であれば、視覚のテストを受けることが必要かもしれません。より簡易的な手段をお求めであればオンラインカラーチャレンジが便利です。
 

3. 間違った色見本

 
色の判断のために物理的な見本を使用していますか?色の把握において、実際の見本を元に色を評価するのは、効果的なコミュニケーション方法です・・・ただし、その場合は、基本的なガイドラインに従っていなければなりません。
 
第一に、そのような見本は正しい素材でつくる必要があります。例えば、あなたがタオル用として使われるテリー織の布を製造しているとします。その場合に紙の色見本を用いてしまうと、正確な色の実現が難しくなります(テキスタイルカラーマネジメント)。素材によって、顔料、インク、染料への反応が異なるため、同じ素材でできた見本で色の判断を行うようにしましょう。これは製造業者にとってストレスになりやすいポイントです。
 
さらに、見本は汚れやシミ、色あせなどの影響が考えられますので、実物サンプル管理方法の徹底解説を参考に、正しくサンプルを管理するようにしましょう。
 
 
Judge QCライトブース
こちらの品質管理マネージャーは、Judge QCライトブースの中で、テキスタイルのサンプルを色の基準と照らし合わせて、異なる光の下でも正確な色が表現できるように細心の注意を払っています。
 

4. デバイスごとに異なって色を表示

 
電化製品の展示場や販売店を訪れたことがある人なら、並んでいるテレビそれぞれが、同じ画像なのに色を異なって表示していることに気づいたことはありませんか?このようにデバイスによって色が異なって表示されるのは大きな問題です。しかし、携帯、タブレットやパソコンの画面を使って色の決定を行う時に、多くの人はこの点を気にしていません。あなたのデジタルカメラは正しい色を撮影していますか?その写真のデータを送信したとしても、それを受け取った評価担当者は、正しい色が「見えている」のでしょうか?
 
 
色補正
写真データの転送は色を判断する上で決して最善の策ではありませんが、実物サンプルの共有が難しい場合には、使用するすべての端末の色補正を行うことが効果的です。
 

視覚だけを頼りに色を決めていませんか?

 
「素晴らしい色」の実現は終わることのない旅のようなものです。新たな素材や製造方法の登場で色の管理が複雑化していますが、一方で色管理のツールも進化しています。これらを使いこなして、正しい色に近づきましょう。
 

標準光源色彩測定ツールをすでにご利用されている場合には、あなたの旅路はもう少し先にまで進んでいることになります。今後のブログでは、より踏み込んだ内容をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに!

 

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