消費者は自然に「人とのつながりがある」 ブランドを選択する
米国のマーケティングイベントFUSE 2017(https://marketing.knect365.com/fuse/)は、ブランドは今日の社会で単に生き残っているだけではなく、繁栄しているという貴重な知見を示しました。
紹介された個々のシナリオには独自の課題と障害がありましたが、共通して一つのことが重要であることが非常に明快でした。
- それは、ブランドはブランド自身と消費者の間に「人的つながり」を構築しなければならないということです。
ブランドに人間味を与えることは、現在失いつつある消費者のブランドに対する信頼のレベルを回復させる(または、場合によっては生じさせる)ことができます。
FUSEのスピーカーは、ブランドに人間味を与えるよう企業が戦略を変えたいくつかの具体な例を話しました。これからその要約をご紹介します。
・何が私たちを人間的にするのか
Cheryl Swanson、FUSE共同議長、パートナーおよびToniq LLCマネージングディレクター
人間の経験の80%が目というフィルターを通るので、色は消費者が特定の製品を購入する主な理由になります。Cherylは、この体験を消費者個人とデザイナーの両方に結びつけました。消費者が自分の目に頼って購入するのと同じように、デザイナーは創造的なビジョンを実現するため、色に頼っています。
・あなた自身のブランドに誠実でいること
Ron Burrage、Hershey Companyシニアディレクター&グローバルデザイン責任者
本物であるということは、ブランドを成功させる重要な要素です。独創性、業界の知識、大胆さ、特殊性を強調して、Ronは、マーケティング担当者たちに「自分のブランドを他のものから区別し、注目させるものはなんだろう?」という問いを投げかけました。
・一瞬をすばらしくする
Vince Voron、Dolby副社長兼エグゼクティブクリエイティブディレクター
Vinceが「特別な瞬間」について語ったとき、彼は率直に社内のクリエイティブな人達や、彼らの革新を促す能力について話しました。Vinceの話はX-Riteチーム(ご興味がある方は、Ron Voigtの " なぜデザイナーがリーダーであるか "(英語)の記事を参照してください)も強く共感しました。
今すぐ行動しましょう
Peter Horst、ハーシー社 元CMO : Martha Stewart、ライフスタイルブランドアイコン : Stephen Webster Mary Kay、Inc.ブランド&デザイン担当副社長
PeterとMarthaとStephenは、「消費者を第一に考える」の姿勢ではなく、「人を第一に考える」というビジネスの姿勢でブランドがより良く変わったことについて話しました。3人の講演者は、ブランドの成功のためには、敬意、進化、適応への意欲、イノベーションがいかブランドの成功に重要であるか、今日の競争が厳しい環境におけるマーケティングが、どれほど「実存主義的思考」が必要とされているかを強調しました。
X-Riteが提供できる価値とは?
人の感情は(意識的または無意識的に)色に影響を受けます。ブランドカラーを正しく実現することは、単なるビジネスではなく、エックスライトの責任だと考えています。私たちの使命は、エックスライトのソリューションでサプライチェーン全体の精度と正確性を向上させ、企業が色の一貫性を維持し、ブランドの遺産、意志、本物であることを保持するお手伝いをすることです。
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デジタル基準色に適した測色計を使用していますか?
テキスタイル、自動車部品、プラスチック製品のいずれの生産においても色の一貫性を実現することは重要で、色が異なる場合、最終製品が採用されないという事態が起こりえます。残念なことに、製造過程では、カラーエラーが発生してしまう可能性は高い現実があります。
エラーに対処する一つの方法は、デジタル基準色を作成し使用することです。デジタルの基準色は、色やデザインレイアウトを正確に指定して伝達し、また着色料や原材料を定式化することを可能にします。また、ブランド・オーナーに対しては、自分の求める色が実際に生産されうる色であるという確信感を与え、また、製造業者が、迅速かつ効率的に作業することを容易にします。
デジタル基準色を作成するには、正確で再現性の高いマスターの分光測色計が必要です。しかし、市場には非常に多くの機器があり、何を基準に選べば良いか分からないという方も多いのではないでしょうか?
比類なき精度を備えた測色計
1 – 最小の器差(inter-instrument agreement)を提供します
Ci7860は理想的なマスターデバイスです。同一機種同士の器差は平均0.06 DE*と、業界で最も正確なデジタル基準色を作成できます。それどころか、Ci7860は市場にある他のどのデバイスよりも25%厳しい仕様を達成することができます。
ワークフローにおいて測色計を選択する際には、機器同士の器差が非常に重要なポイントとなります。それは技術的な内容であるため、一般的に誤解を生みやすいという残念な事実があります。器差がなぜ重要かをもっと知りたい方は、Inst-Instrument Agreement(英語)ブログをご覧ください。
2 - 高度な蛍光増白剤の制御
洗濯石鹸から紙、靴下まで、蛍光増白剤は「白よりも白い」外観を与えるためによく使用されています。しかし、蛍光増白剤を含む測定サンプルは視覚的評価と測定値が相関しないという結果をもたらすので、製造者の悩みの種となっています。
詳細については、製造中の蛍光増白剤の管理ブログをご覧ください。
UVエネルギーの量を制御した分光測色計を使用すると、正確な測定が可能になります。これは、蛍光増白剤を使用する場合は重要です。Ci7860は、キャリブレーションされたUVフィルターを使用して、紙、テキスタイル、プラスチック、塗料およびコーティングに使用される高度な蛍光増白剤を測定、制御します。
X-Riteが、工業界においてメーカーが蛍光増白剤を制御するのをどのように手助けしているかについては、 報告書 Making the Invisible Visible(英語)を参照してください。
3 –ヘイズを定量化する能力
ヘイズ(かすみ)は、どれだけの光が透過しているか、サンプルを通過するときに拡散される光の量がどのくらいの量かを示します。ヘイズの発生は良し悪しで、例えば、宛先を見せるための透明なフィルム付の封筒にヘイズが発生している場合、郵便局の文字認識マシンは住所の文字を識別できません。一方で、ヘイズは、車両のブレーキ電球の光を拡散させて、フィラメントでなく拡散された赤い光が見えるようにすることができます。
ヘイズを必要とするか除外したいかに関わらず、Ci7860はASTM D1003 -仕様の特定と品質管理の標準的なプロセスを満たし、管理することが可能になります。
4 -測定領域をビデオプレビューで正確に確認
多くのメーカーは測定するサンプルのサイズで問題を抱えています。測定したいサンプルの40%が、測定するには小さすぎる場合、どのようにして精度を保証できるでしょう?Ci7860は、最大5つのアパーチャ(口径)サイズ(25mm、17mm、10mm、6mm、オプションの3.5mm)をご提供しています。これらは、反射、不透明、透明、および半透明の材料の測定に使用することができます。
Ci7860はまた、最小の物体であっても、あらゆるPCディスプレイでビデオプレビューを確認することが出来るので、測定サンプルを正確に見ることができます。
5 – 画像による測定後の追跡確認を可能に
Ci7860は、写真の追跡資料を提供する唯一のデバイスです。イメージをジョブファイルに保存、すべての測定値を正確に記録し追跡することができます。ターゲットを間違って行ったり、サンプルに不具合があった場合には、後日でも確認できます。
Ci7860はあなたに最適ですか?
17_色差について
前回は色彩値の成り立ちと数値化の道筋を概観しました。
しかしながら産業の世界では色彩値そのよりも色と色の差、色差のほうが重要になります。
なぜなら、生産物として必要な基準となる色を決めたら、如何にその基準の色に近い色を生産するかに関心があるからです。色彩値そのものにはあまり関心がありませんでした。
この辺の事情は近年変わりつつありますが、依然として色差が最も重要であることに変わりはありません。
前回説明したL*a*b*色空間は概ね人間の色覚に均等な色空間になっているため、色の知覚差はその距離で計量化することができることになります。
まず、L*a*b*色空間に基準となる色の色彩値をプロットし、次に生産した色の色彩値をプロットします。この空間上の距離を色差として考え、ΔE76として数値化しました。
ΔE76は1976年に規格化された色差式という意味です。ちなみにこのΔEの「E」はドイツ語の「Empfindung=感覚」に由来しています。(ハズカシながら、はじめ「ERROR」の意味かな?と思い違いをしていました...)
図-43 L*a*b*空間の距離=ΔE76
こうして求められた色差の数値の意味は以下のように定義されています。
色差 ΔE* | 名称 | 適用 |
0.2以下 | 測色不能領域 | |
0.3 | 識別色差 | 同一物体の測色再現精度 |
0.6 | 1級(厳格色差) | 各種の誤差要因を考えた場合の実用的な許容差の限界 |
1.2 | 2級(実用色差a) | ならべて判定した場合に、ほとんどの人が容易に色差を認める事ができる |
2.5 | 3級(実用色差b) | 離間して判定した場合に、ほぼ同一と認める事ができる |
5.0 | 4級 | 経時比較した場合に、ほぼ同一と認める事ができる |
10.0 | 5級 | |
20.0 | 6級 | 色名レベルの色の管理 |
一般的には、
● ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル
● ΔE=2~3程度で2つの色を離して見比べた時に違いが分かるレベル
● ΔE=5程度で2つの色をかわるがわる見比べた時違いが分かるレベル
という程度に捕えておけばよいと思います。
Japan Colorなどでも、標準印刷認証はΔEを5程度で管理しますし、プルーフ認証は並べて本紙とプルーフを比較するためΔE=2~3の許容範囲が用いられているのはこのレベルで色差を考えているからです。
このΔE76は簡単に計算できるため大変重宝なのですが、ΔEの値が3以下程度の小さな色差が問題となる生産の現場では人間の知覚との相関がずれてくることが問題となっていました。
皆さんも色の生産の現場で基準色に対して生産色の官能評価をおこなう仕事をしている方なら経験があるのではないかと思います。
たとえば、グレーなどの無彩色だと人の目はかなり色の差に敏感になります。
ΔE76=1.5程度の色差のグレーでも比較的簡単にその差が目についてしまうのではないかと思います。反対に彩度の高い色ではΔE=3-4ぐらいあってもあまり違いが分からなかったりします。
そうすると、出荷の基準がΔE<2.5だとすると、グレーのΔE76=1.5のサンプルはOKということになりますが担当者としては「こんなの出荷してもいいのかなー」となりますし、彩度の高い色のΔE76=3は「えー...これで出荷できなかったら歩留まり悪くて仕事にならないよ...」なんてことになりまねません。
そうすると勢い「やっぱり視覚評価じゃなきゃ駄目だなー」となってしまいます。ですから、より視覚との相関性の良い色差式の開発が望まれるようになりました。
次回はその辺の話をしたいと思います。
16_均等な色空間の試み
今回は前回説明した色彩値CIEXYZから均等な色空間への試みを説明しようと思います。
その前に、前回求めたCIEXYZで現される3次元の色空間でした。3次元の空間というのは人間にとってその位置関係を想像しにくいため、この3次元空間を特定の平面で切り取って、分かりやすい2次元平面として提示するxy色度図がよく利用されるようになっています。
この馬蹄形で有名なxy色度図(図-36)は皆さんもどこかで見たことがあるのではないでしょうか?
このxy色度図はCIEXYZから下の簡単な変換式から求められます。
ここで求められたxを横軸に、yを縦軸としてプロットすることでCIEXYZを2次元座標にプロットすることができるようになりました。
これはちょうどXYZ直交座標系においてX+Y+Z=1で切り取った面にXYZを投射した2次元平面を表しています。
図-36 xy色度図
この色つきの色度図は色を正しい色を表していないため、色彩屋さんたちは上のようにカラーで表示される色度図を嫌います。あまり重要なことだとは思いませんが...。ですので、図-37のように白黒の色度図を使用しましょう。
ここで、上側の曲線はスペクトル色(単色)を表すスペクトル軌跡と呼ばれます。その上にプロットされている数値はスペクトルの波長を表しています。
点線は輝度が0となる純紫軌跡と呼ばれます。
人の目に知覚される色はすべてこの馬蹄形の内側にプロットされることになります。馬蹄形の中心に行くほど彩度が失われ無彩色になります。
図-37 白黒のxy色度図
X,Y,Zの値を入力すると色度図上にプロットされるものを作ってみました。遊んでみてください。
このように作成されたXYZ色空間と、そこから派生したxy色度図により色を数値で指定するすることができるようになりました。しかし、これらの色空間や色度図にマンセルの視覚的に均等に配置された色をプロットしてみると、この色空間はどうも私たちの視覚に対して均等な空間になっていないようでした。
図-38 視感反射率Yとマンセルバリューの比較
このグラフを良く見るとY=20 でV=5で真ん中ぐらいの明るさになっています。つまり,20%ぐらいが白になると人は概ね半分ぐらいの明るさに見えることになります。
写真のグレーバランスカードは18%グレーのカードを使用していたのはこのためです。
また、5本に1本ぐらい白髪が生えると「ずいぶん白くなりましたねー」と言われるのもここに原因があります。
図-39 xy色度図にプロットした等間隔のマンセル色(V=5)
このような均等でない色空間は、色彩値の絶対値はもとより、色を生産する産業界にとってより重要な役割を持つ色差の計算に悪い影響を与えてしまいます。
このため、色彩学者はより均等な色空間を求めて改善を重ねることになります。
途中さまざまな均等色空間への挑戦が試みられますが、最終的に1976年にCIEから現在最も広く使用されているL*a*b*の色空間が提案され、多くの色管理の現場で使用されています。
XYZからの変換式は
L*に関しては、
a*,b*に関しては、
ここで
(X⁄Xn) および f (Z⁄Zn) に関しても同じ
ここでXn Yn Znはイルミナントの白色点のX,Y,Zを意味します。
となります。
こうして求められたL*a*b*の色空間は図40のように明度のL*とマンセルバリューにはほぼ線形の関係がとられていると共に、図41のようにa*-b*色度も概ねマンセルの色票を円形に配置するよう均等な空間となっています。
図-40 L*とマンセルバリューの関係
図-41 a*b*色度図にプロットした等間隔のマンセル色(V=5)
L*a*b*空間の特徴を以下に挙げておきます。
- L*は明度をあらわす軸
- a*は緑―赤軸で(+)方向に進むと赤の色味が強く、(-)方向に進むと緑の色味が強くなる
- b*は緑―赤軸で(+)方向に進むと黄の色味が強く、(-)方向に進むと青の色味が強くなる
- XYZからの非線形な変換によって数値計算によって導出することができる
- 知覚的に概ね均等な色空間である
- イルミナントの白色点Xn,Yn,Znで正規化されているため,白はどの照明でも同じような値となる
- へリングタイプの反対色ビジョンセオリーへの対応が盛り込まれている
図-42 L*a*b*色空間
具体的には図-42にあるような色空間になっています。
余ったインクを捨てていませんか?もう一度使えます!
ブランドオーナーは、消費者の目にとまる商品パッケージを日々求めています。そのため、印刷会社は、印刷時間を短くし、特殊な色材で、正確なカラーを実現することを求められています。多くの印刷会社が、インク調色(インクの色)に多くの時間を費やし、色が正しくないときには、そのインクを捨てることになります。
このサイクルで立ち往生してしまうと、実質的にインク代を2倍支払わなくてはなりません。購入しては廃棄する、この廃棄物が経済にまたは地球に与える影響はどのようなものでしょう?
今日は、インク調色ソフトウェア(インクカラーソリューション)の残インク管理機能がどのように在庫と廃棄物を削減し、廃棄コストを抑えることができるのかご説明します。
手動でインクを調色していますか?
コンピューターを使用せずインクを調色している方は、正しい色を得るために約12回ほどの試行錯誤が必要なのはご存知かもしれません。コンピュータによるカラーフォーミュレーションは、試行錯誤の回数を劇的に減らしてくれます。正しいプロセスを確立すれば、最初のトライで、ある程度の色差に近づけ、要求の95%の一致を期待できます!
インク調色ソフトウェア(インクカラーソリューション)をセットアップしましょう。まずは基本色のデータベース作成に役立ちます。そして、生産過程では、調色レシピを生成し、そのレシピに強弱をつけ、無駄を最小限に抑えた最も効率的なインクワークフローを作ることに貢献します。
弊社のブログをチェックしてください。コンピュータによる調合の用意はよろしいですか?
余ったインクが眠っていませんか?
さらなるコスト削減を達成してくるのは、残インク管理機能です。実際にインハウスの色から新しい調色を行うためのガイドを与えます。
方法は次のとおりです。
1 - 分光測色計を使用して、余ったインクを測定します。 IFS(Ink Formulation Software)が今後のレシピで使用するためにデータをライブラリに追加します。
2 - あなたが本当に取り除きたいインクがある場合、レシピでその色を指定することもできます。
以上です。残インクの管理機能は、特殊インクの在庫を減らし、誤った調色や再印刷を減らし、製造時間を短縮することを意味します。
試してみませんか?
詳細については、IFS(Ink Formulation Software)について弊社へお問合せください。
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15_色彩値XYZを計算してみよう!
これまで、色彩値の算出に必要な3つの要素、①照明としての光、②色としての物体、③受光器としての目をそれぞれ説明してきました。今回は、これらの要素から得られた値を使用してどのように色彩値を算出するかを説明します。
元来、色はスペクトル全体に広がる情報を持っています。
たとえば、この可視域(概ね400nm-700nm)に広がる色の情報を10nm間隔でサンプリングするとして、各波長における31の反射率のデータ(情報)が得られます。
この色の31次元に渡る特性が人の目(錐体という受光器)に落とす3次元の影を算出するわけです。
影ですから物体は同じでも、光の射す方向や,影のできる壁の形状で影の状態は変化します。
色彩計算の場合、光の射す方向が①「照明としての光」にあたり、壁が③「受光器としての目」ということになります。
イメージとしては図-34のようになります。
図-34 色彩値CIEXYZ算出のイメージ
実際の計算式はといいますと、
ここで、
S(λ)は、イルミナントの分光分布の相対強度
R(λ)は、物体の分光反射率
x ̅(λ),y ̅(λ),z ̅(λ)は、等色関数の刺激値
を表します。
kの値は放射色の場合と反射・透過色の場合で異なり、放射色の場合、k= 683(lm/W)として、Yの値がそのまま測光量の輝度となるようになっています。
反射・透過色の場合、として、完全拡散反射物(全ての分光反射率が1)のYの値が100となるよう正規化します。
実際の測定においては離散的にサンプリングした反射率係数を使用し、積分の代わりに下記のように各波長の総和によって算出されます。
CIEが定義している等色関数は360nmから830nmの1nm間隔のテーブルになります。しかし、実用的なハンディーの測色計などでは 400nm近傍から700nm近傍までの10nmもしくは20nmの分光間隔でのサンプリングが一般的になります。
このため、CIEのイルミナントおよび等色関数ではなく、ASTM (American Society for Testing and Materials) E308が提供するS(λ) x ̅(λ),S(λ) y ̅(λ),S(λ) z ̅(λ)を重価係数として纏めたテーブルを使用します。
ここでは波長間隔を実用的な10nmや20nmに広げる際に発生する誤差を小さくするための補正が適用されますが、この際,測定方式によってテーブル5とテーブル6という選択肢が出てきます。
この辺の選択肢に関しては,いずれ機会があれば説明したいと思います。
ここで20nm間隔のD50イルミナント/2°視野等色関数における重価係数を使用して色彩値のCIEXYZを算出する方法を説明します。
Rは測定した分光反射率係数です。
Wx,Wy,Wzは重価係数(20nm間隔のD50イルミナント/2°視野)それぞれの波長でRとWx,Wy,Wzを掛け算しR*Wx,R*Wy,R*Wzを算出します。
R*Wx,R*Wy,R*Wzの各波長(各列)の総和がX,Y,Zの各値になります。
計算の結果は
X=27.39 Y=12.89 Z=6.21 となります。
このようにXYZとして色の3刺激値への数値化が実施されました。
さて、皆さんはこの値を見て何色か想像できますか?
この赤は、図-35のような赤になります。このXYZの数値からですとなかなかこの赤は想像しにくいのではないでしょうか?
図-35 X=27.39 Y=12.89 Z=6.21 の色
また、XYZの色空間は人間の目にとって均等な色空間ではありませんでした。
このためこのXYZをベースとして、より均等な色空間を定義する試みが繰り返されることになります。
次回はこのような均等色空間の試みについて説明したいと思います。
14_色彩値の2°と4°?
前回の話で人の視覚の波長応答特性としてCIERGBの等色関数ができたとこまでを説明しました。
それは、こんな感じの応答特性でした。
図-30 RGB表色系の等色関数
このCIERGB表色系の等色関数は一部に負の刺激値を含むため、計算機の発達していない1931年当時では計算が複雑になりがちでした。 そこで、どのみち生理錐体の応答特性そのものではないのだから、「さらなる線形変換をしても特に文句は無いでしょう...」ということで、全ての関数の値が正(非負)になるよう新しい仮想の原刺激[X],[Y],[Z]を定義し、CIEXYZ表色系を導入しました。
RGB表色計からは
という行列変換によって線形一次変換で求められるようになっています。
結果として得られた等色関数は図-32のようになりました。
図-32 CIEXYZ表色系の等色関数
これにより、r ̅(λ),g ̅(λ),b(λ)からx ̅(λ),y ̅(λ),z ̅(λ)が求められました。この際、y ̅(λ)を明所視での分光視感効率のV(λ)*と同じにしたことで、Yの値が放射測定では、測光量の輝度を表すように工夫されました。また、反射測定では完全拡散反射面でY=100になるよう正規化することでYが視感反射率になるようになっています。
* 分光視感効率V(λ)は555nmの感度を1とした平均的な人間の波長感度です。
このCIEXYZ表色系は、それまでのGuildとWrightがおこなった被験者17人(それぞれ7人と10人別々におこなった実験) による平均値が使用され1931年にCIEにより定められました。この際、目の中の錐体のなかで色覚能力の高い中心窩から立体角にして2°の領域が調べられました。
しかし、中心窩のあたりには黄斑色素が存在し他の領域と色覚が異なること、また、2°視野の観察条件は極めて狭い範囲の色覚であり、人は通常もっと広い範囲で色覚判断をしているという観点から1964年に10°視野での等色実験が実施されました。
1931表色系の実験が17人の被験者全て白人の20代男性で,色覚異常テストがおこなわれていなかったことに関しても再実験をする必要があったようです。
その結果、1964年の等色関数は1931年のものとは少しばかり異なる応答特性となりました。
この表色系はX10 Y10 Z10表色系と呼ばれています。図-33に2°視野と10°視野の応答特性の違いを示します。
図-33 2°視野と10°視野における等色関数の違い
さて、ここで2つの応答特性が登場したわけですが、どのように使い分けるのでしょうか?
それは、色を評価する対象が4°以下の視野を使用して色を評価する場合では2°視野を使用し、4°以上の視野を用いて色を評価する場合は10°視野を使用するということになっています。
グラフィクスの場合、均一な色の領域は比較的小さいため2°視野を使用します。一方、車のボディー色(自動車 塗料)のような大きな領域で均一な色が使用されている場合、10°視野を使用します。
ただし、グラフィクスの業界でもスクリーン印刷などでは10°視野を使用するのが一般的になっています。
このように2°の等色関数を持つ仮想的な観測者をCIE1931標準観測者もしくは2°視野標準観測者と呼び、10°の等色関数を持つ仮想的な観測者をCIE1964標準観測者もしくは10°視野標準観測者と呼びます。
ということで、3つの要素の概略を説明してきましたが、これで3つの要素から色彩値を求める準備が整いました。
次回はこの3つの要素からどのようにして色彩値が導かれるかを説明します。